斜面崩壊で予想よりハードだった登り(1日目)
会員4人と一般参加者2人の計6人で、午前8時に博多駅前を出発。今回の目的は、扇山山小屋の既存のくみとり式トイレ3基の内1基を撤去して新たに設置された(個人が自費でされたとのこと)携帯トイレブースの視察です。
途中、椎葉ダムを見下ろす公園で昼食をとった後、松木登山口に向かう林道を上がっていきます。もともと「斜面崩壊で登山口までは行けないので、行ける所まで行ってそこからは歩き」と聞いていましたが、当初の予定より手前の標高820m地点からの登山開始となりました(午後0時30分少し前)。
1時間40分かけて林道を3.8km登り、扇山の稜線に出る最短ルートの登山口(標高1,230m)に着きました。そこも大きく斜面が崩壊していて、足元が崩れやすい急傾斜を、倒木やつたをかわしながら登らなければなりません。振り返ってみると、そこからの15分が、2日間の山行で一番ハードでした。約1時間で尾根に出たら、そこからは約20分のご機嫌な尾根道。午後3時30分、扇山山小屋に到着。



扇山山小屋のルールに従って宿泊準備 & トイレ確認(1日目夕方)
小屋に着いてまずしなくはならないのが「水くみ」と「薪(まき)集め」。小屋の近くの水場は、水が出ていない時もあると聞いていました(念のため、各自必要量は背負ってきていました)が、今回は大丈夫。小屋にあったやかん全てに水をくみます。小屋の一隅に薪(まき)が積まれていましたが、「使った分は補充」というルールに従って、一晩に使うであろう(結果的にはそれ以上の)量を集め、小屋にあった鋸(のこぎり)で、決められた長さに切り揃え、積み上げました。
ここでやっと小屋の中をじっくり観察。タイル張りの土間は土足厳禁なので、入口で靴を脱ぎます。囲炉裏のような体裁で薪(まき)ストーブが据えられ、2辺を板張りの床(狭い方に1人、広い方に4~5人が寝られる広さ)が囲んでいます。掃除された土間に、備え付けのシートやマットを敷けば、さらに数人寝ることができそうです。
次に、小屋から一段下がった所にあるトイレを見学。まず目に入ったのが、携帯トイレブースの扉の掲示。「もちかえりトイレブース」とあり、これだけで、設置者の強い思いが伝わってきます。中はきれいな状態で、使い方や使用後の持ち帰りについての手書きの掲示もわかりやすい。従来のくみとり式トイレは、掃除はされていましたが、くみとりが間に合っていないようで、上の方までたまった汚物が目視できる状態でした。



夕食時の話題は「携帯トイレ」(1日目夜)
夕食中、自然と携帯トイレの話になりました。
「持ってはいるが使ったことがない」
「ツアーで山に行った時、携帯トイレを持って行ったが、他のツアー参加者に『なぜそんなものを持って来たのか。使ったら持ち帰らないとならないのだから、行きたくなったらその辺で“お花摘み”をすればいいのだ』と言われた」
「世代によって、山での排せつについての感覚に差異があるように思う」
「回収ボックスは、あれば嬉しいけど、『ボックスが設置できないから、ブースが設置できない』ということになるなら、なくてもいい」
「昔は公園にはゴミ箱があり、食べたお弁当柄は捨てて帰るのが当たり前だったが、今は、持って帰るのが当たり前になっている。使用済み携帯トイレも、そうできるのではないか」
「最終的には“持ち帰り”となるべきだと思うが、公園でのゴミの持ち帰りが浸透するまで時間を要したように、“携帯トイレの持ち帰り”が当たり前になるには時間がかかるだろう。移行期には、回収ボックスが必要と思う」
「まずは知ってもらうことが大事なので、自治体の防災イベントや小中学校の授業などで紹介してくれたらいいと思う」
「イベントで周知を図るのは良いことだと思うが、そういう場合は、ブース内に袋が置いてあって、そこに捨てていくようになっていることが多い。そこで初めて携帯トイレを使った人は、“携帯トイレ=置いていっていいもの”と認識してしまうだろう。実際に友人がそうであった。そのような人が、山のブースでも置いていってしまうのではないか」
食事中にトイレの話をするというのが少しおかしかったのですが、意図せず自然な流れで始まったということ自体が、今回の山行の意義のように感じました。

予定外の「携帯トイレ講習会」(2日目朝)
翌朝6時ごろ、誰からともなく起床。一晩中続いた強い風と雨の音、それと寒さで、ほぼ全員が寝不足の状態。昨夜の残りや持参したパンなどで朝食をとった後、7時20分ごろに小屋を出発。約20分で山頂に到着。まっ白で何も見えず、寒いこともあり、早々に退散し、8時過ぎには小屋に戻ってきました。
出発準備をする中で、こびりついたリゾットをふやかすためにコッヘルに満たしておいたお湯を処分する方法として思いついたのが、各自が持参した「携帯トイレ」。使い方がわからないという参加者もいたため、使用方法の説明をし、重くなった使用済み袋を背負って帰る体験もしてもらうことに。3種類の異なる携帯トイレが集まったので、それぞれの違いを比較することもできました。
〇A社製
セット内容:内側に高速吸水凝固シートが接着された便袋、高密着チャック袋、水溶性ポケットティッシュ
感想:便袋が大きくしっかりしているので、便座にきちっとセットができて安心感があるが、使用後はかさばるし、かなり重くなる。高密着チャック袋(防臭袋)も厚手でしっかりしているので安心。
〇B社製
セット内容:便袋、ダブルチャックの防臭袋、吸水ポリマー
感想:便袋が小さめなので、便座によってはセットできなさそう。またスーパーの袋のような感じで、A社のと比較すると頼りない感じだが、防臭袋はしっかりしている。使用後はコンパクトで比較的軽い。
〇C社製
セット内容:ダブルチャックの袋、ジェル(凝固剤)、水溶性ポケットティッシュ
感想:便器にセットはできないが、袋が自立するので野外では使いやすいかも。使用後は軽いが、二重にする袋が付いていないので不安。購入から期間が経っていたそうで、凝固剤が固まってしまっていたが、手でもみながらかけたら、使えた。
3種それぞれに特徴があり、製品の優劣ではなく、トイレブースの有無、荷物の多少、日帰りなのかどうかなどで、山行ごとに適する携帯トイレが異なってきそうです。選択する上での参考資料となるような一覧表があれば便利だと思いました。
※当会では、携帯トイレの比較分析にも取り組む予定です。
手分けして小屋内をきれいに清掃し、午前9時15分ごろ、下山を開始しました。

寒さに震えながら、尾根道を下る(2日目)
夕べが結構な雨量だったこともあり、行きの急傾斜の道は危険と判断し、松木登山口に降りる登山道を下ることにしました。尾根道は風があたることもあり、4月と思えない寒さ。でも昨日とはうってかわっての青空は気持ちいい。約45分で登山口に着き、そこからまた林道を1時間20分かけて下り、前日の駐車位置まで戻り、「扇山携帯トイレブース視察山行」を終えました。
会員Aにとっては初めての無人小屋泊でしたし、「トイレ協議会」企画の山行らしい要素も多く、とても楽しく有意義な2日間でした。

※当会では、上記のような山行(主に日帰り山行)を時折実施しています。
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