第1回 定期総会

開催日 2009年6月21日(日)
会場 太宰府館「まほろばホール」
太宰府市宰府3-2-3
来場者数
講演 後藤 利雄氏(大分県山岳連盟 会長)
「久住山避難小屋トイレの現状と課題」

議事の概略

平成21年6月21日(日)、太宰府天満宮に程近い「太宰府館」3階の「まほろばホール」において13:00から開催されました。
竈門神社・権禰宜で、当協議会運営委員の松大路秀一氏の司会により、山上司会長の挨拶に続き、来賓の環境省九州地方環境事務所福岡事務所所長の松永洋介氏からご挨拶をいただきました。環境省は近年、環境保全対策の一環としての山岳トイレの技術普及を図るため、平成15年度から「環境技術実証モデル事業」を実施しています。
団体会員・福岡県勤労者山岳連盟の平田真介氏が議長に選出され議事に入りました。
まず、運営委員長の太田勝氏から、2008年度における活動について報告がありました。「山のトイレマナーに対する啓発活動」が中心でした。続いて、運営委員の高松登志子さんから会計報告がありましたが、特に質問もなく、共に拍手をもって承認されました。なお、会計監査をお願いしていた竈門神社の貞方岩戸氏から、適切な会計処理であったとの監査報告をいただきました。
2009年度の活動方針ならびに予算案についても太田委員長から説明があり、承認されました。主な活動は、前年度同様、福岡県勤労者山岳連盟との共催によるふるさとの山県民清掃ハイクへの参加をはじめ、各地でのキャンペーンを行い、山でのトイレマナーに対する啓発活動です。地道に続けていくことに意義があると考えております。
また、オーパーユースによる水質の悪化が全国的に問題になっており、いろいろと解決策が模索されてはいますが、未だこれが最善策だというものは見出せていません。当協議会でも本年度中に数回、長年県内の登山者の多い山での水質について採取、検査を続けている福岡県山岳連盟に協力し、宝満山などでの水質調査に参加することにしております。
なお、運営委員の一部に変更があり、太田委員長から新委員を含む全員が紹介されました。
最後に、昨年8月に完成し、登山者から好評を得ている宝満山キャンプセンター・バイオトイレの現況について、実質的に管理運営されている西鉄山友会の現会長で当協議会の運営委員でもある伊藤博紀氏から、詳細なデータにより説明がありました。40年前にキャンプセンターとトイレが建設されましたが、以後のトイレ管理の苦労話や、トイレ方式の検討、バイオ方式の選定、決定から建設に至るまでの経緯、現在のバイオトイレの仕組みについても説明されました。
九州、とりわけ福岡県の山々は標高の低い山が殆どで、比較的に短時間で往復できる山が多く、入山する前にトイレを済ませておけば、緊急の場合は別としてまず心配ないのでは、との意見も出され、九州、福岡県に限らず、山岳トイレの必要性、有り様については、安易に作ればよいというわけではなく、以後の管理、費用負担等多くの課題もあり、十二分に検討、論議を重ねて結論を出していくべきだと改めてかんがえさせられるお話もあり、今後、県内の山のトイレ問題を検討していく際の留意点として大いに参考にしたいと思います。

「トイレ協議会通信 第3号」より

講演内容

後藤氏は、大分県高体連登山部顧問、同専門委員長を歴任され、大分県山岳連盟理事長を10年間務められた後、2009年春、会長に就任されました。
九重山系、祖母傾山系の地図を製作されたことはご存じの方も多いと思います。
久住分かれのトイレは、昭和37年正月にホワイトアウトなどで道に迷った7名の若い男女が遭難死するという悲惨な事故が起きたことから、昭和39年に建設された避難小屋と同時に併設されたものです。まだ登山者が比較的少なかった時期でもあり、現在のようにまで登山者が激増するとは誰も想定していなかったようで、当時としてはこれで充分対応できると考えたのでしょう。処理能力は720/日ですが、昨年ミヤマキリシマの時期の利用者は2000人と極端なオーバーユースとなっており、これに落ち葉などが詰まったりすれば、現在の土壌処理式の循環型のトイレが機能できないこともしばしば起こっているようです。
それに女子トイレは使用前に便器を拭いた後、使用することが多いようで、便器の周囲にトイレットペーパーが山積みになっていることもよくあるそうです。
それに、冬場は凍結しているのに使用し、オーバーフローすることも多かったらしく、現在は冬期は閉鎖しているそうです。只その場合、トイレがあるものと期待し我慢してきた登山者がとる行動はあまり想像したくありません。
このトイレの耐用年数はあと10年だそうで、現在の状況からみても、単に時期が来たらオーバーホールするというより、有料化し施設を充実させる方法や、携帯トイレブースの設置への変更など、トイレそのものの有り様についてもそれまでに検討しておく必要がありそうです。
今年の久住山の山開きでの登山者は2万人だそうで、外国人も多くなっており、文化の違いもあるのにトイレの説明は日本語のみだそうで、韓国語、英語等での表示が必要だとも指摘されておられました。
後藤さんは、九州の場合、山でのトイレマナーは東北、北海道は別格としてもその他の地域に比してまだまだ低いと認識されており、久住山だけの問題ではなく、登山者、特に日常山との関わりの少ない一般登山者やバス会社やツアー会社に対する啓蒙が重要だが、何よりも「登山の前に用を足しておく!」を強調されました。

「トイレ協議会通信 第3号」より