第2回 定期総会

開催日 2010年6月19日(土)
会場 太宰府館「まほろばホール」
太宰府市宰府3-2-3
来場者数
講演 森 弘子氏(太宰府発見塾 塾長)
「山と信仰」

議事の概略

6月19日(土)午後1時から、太宰府市の「太宰府館。まほろばホール」で開催されました。竈門神社・権禰宜で運営委員でもある松大路秀一さんに司会をお願いし、山上司会長の開会の挨拶の後、当協議会の団体役員である福岡県勤労者山岳連盟の平田真介さんを議長に選出して議事に入りました。
まず、運営委員長の太田勝さんから平成22年度の活動報告があり、種々の活動実績について個別に説明をされました。引き続き、運営委員の高松登志子さんから会計報告がされましたが、共に拍手をもって承認されました。また、次年度の活動計画、予算についても太田委員長から説明があり、問題なく承認されました。

「トイレ協議会通信 第5号」より

講演内容

森さんは、九大大学院に入学され、「宝満山の環境歴史学的研究」で博士号を取得され、宝満山の研究をライフワークにされつつも、「山と信仰」について幅広く探求されてきた成果の一部を披歴いただくことにしました。
森さんから、宝満山山ろく周辺の急激な開発に加え、急増する登山者やそのマナーなど、昔と比べ、随分様変わりしてきたように感じられ、山の保全について考えていきたいと、「環境歴史学」に取り組み始めたとの自己紹介をいただくとともに、今回は映像を使って楽しくいきたい!とのコメントも。
会場前面の大きなスクリーンにプロジェクターから映し出されたのは「点の記」のポスター!(会場一瞬どよめく!)これだけで参加者は森さんのお話に引きまれていきました。
出演した俳優名と共に、剣岳に三角点を設置するために山頂を目指す陸軍の測量隊とマタギ、対抗して登頂一番乗りを!と競争心を燃やす日本山岳会。結果は映画を鑑賞された多くの方がが存じのとおりです。ただ、それを知った日本山岳会は手旗信号で登頂成功を祝福したという、単に「征服ありき!」ではないロマンを感じさせるお話です。
我国では、古来より登山という概念はなく、中でも峻嶮な山は殆どといってよいほど霊山として崇める対象、つまり信仰の対象であり、修験の場であるか、山を生活の場とするマタギの世界であったようで、一般の人が深い山に分け入ることは殆どなかったようです。明治以降、西欧のスポーツとして「山を征服する」ことを目的とする「登山」が普及していきましたが、一方で装備、技術なども飛躍的に進歩し、今日に至っています。
森さんは、映画・点の記にも出てきた実物の錫杖を振ってジャラジャラ!と音を立てて見せられました。これがすでにあったということは、修験者からすでに開山していた証しであり、明治以降、山頂を目指すことを目的とする登山と、山岳信仰との歴史の大きな差異を感じた一コマでした。
九州の宝満山、英彦山、求菩提山などに止まらず、遠く、立山、春日山、富士山、出羽三山など山岳信仰の歴史についても詳しく話されました。古からこれらの山々を、田畑を潤す水の供給源として、或いは「雪形」を種の蒔き時、苗の植え付けの時期の目安として崇め、願いの対象とする農村との関わりもあり、この貴重な自然を守り、次世代に引き継いでいきたいものです。

「トイレ協議会通信 第5号」より